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「畜生!」ヘルメットの中で呪うように叫び、トリガーを引く。
――! 弾切れのアラート。「リロード!」マガジンチェンジの連携要請はマニュアルそのまま。援護を期待して辺りを見回したが、小隊メンバーのフォローはなし。姿も見当たらない。累々たる屍の山。
何発も残ってないマガジンを交換。物陰は土嚢じゃない。仲間だった亡骸。焼け焦げた迷彩スモックの下にはドロドロの粘液が流れる。赤か黒か色の判別がつかない。血かオイルのどっちか。
くそったれ。ヘルメットの中は汗と鼻水と涙でグズグズ。拭いたくてもヘッドセットと循環器を外すわけにはいかない。酸素濃度は殆どMAX。ヘッドセットを外した瞬間に酸素酔いだ。ラリってる間に御陀仏は確実。
ライフルを構え直す。股間が小便で蒸れて不快極まりない。最後に漏らしたのはいつだ? 憶えてない。恐慌とパニック。何度も漏らしたに違いないが今はカラカラ。前後もなく逃げ続け完全に消耗。俺は入隊したての新兵時代を思い出していた。死ぬ程しごかれた基礎訓練。だが所詮は訓練。滅多なことでは死にはしない。
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