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走馬灯? ふざけんなよ、くそったれ。動かなくなっちまった仲間からマガジンとバッテリーを拝借して索敵。俺は今、狩られる側の小動物。怯えに震える眼を凝らす。絶望的戦況。認めたくはないがそれが現実。
立ち昇る土煙。落ち着かない視線は上に泳ぐ。爆撃の黒煙は重く立ち込め、ただでさえ狭い空を更に低くしている。
遠くには途中から折れたビルや崩れた塔のシルエット。不吉な灰色。大きくはないがJP(旧日本国)なら、かつての政令地方都市と同程度の規模と街並み。つまり半端な建造物が多くて路地が狭い。死角だらけ。やたらと広く造られた主要道路は、その直線の長さと無駄な道幅が裏目。俺達は身を隠すスペースを確保できない。
しかし奪還できれば要塞都市として再生できる。広大な平野部は守備も容易い。この作戦の目的もそこだったはずだ。新たな前線基地。補給路の拡大と都市建設。防疫軍のスポンサーは都市企業。奪還できれば金になるのだ。俺はシニカルに口元を歪めた。奪還できればだけどな。半分はやけくそ。
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