戦闘

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 血まみれのバッテリーを繋いで衛星通信を起動。欲しいのは戦況俯瞰。案の定前線はズタズタ。俺は完全に孤立している。絶望的な気分のままGPSで生存率確認。嘘だろ? 何度読み込んでも連携できる仲間は20名に満たない。半径100M以内なら更に半分。踏んだり蹴ったりだ。 「畜生!」考えろ。考えろ。どうすれば、どうすれば帰れる? どうにもならない状況に悪態をつきながら、生き残る術を模索する。楽勝な筈の制圧作戦。何故ここまで壊滅的に崩れたのか、そんなことはもうどうでも良かった。  死にたくねぇ。「くそったれ」誰だってそうだ。当たり前のことをヘルメットの中でぼやき続ける。また少し涙。視界が滲む。 ――! ヘッドセットの警戒アラートが無情に響いた。敵だ。俺は首を竦めて背を丸めた、怖い。死ぬのは嫌だ。だが、やけくその特攻だけは愚の骨頂。冷静になれ。やれることをやるしかない。当たり前だがそれしかなかった。生き延びるんだ。俺は銃身を抱くようにして眼を瞑った。  意を決して顔を上げる。敵のシルエットが土煙の向こうに迫る。「蛙野郎」――ラヴクラフトの描いたクリーチャーになぞらえ「インスマウス」と名付けられた化け物たちだ。は! カエルのくせにマウスだと。このくそったれが。虚しい罵倒。
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