古代神降臨

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――バキィッ! 振り向きざまの太刀。凄まじい打撃。腕が痺れた。ハルピュイアの肉塊は形を変え、幾筋もの触手となっていた。粘ついた音。うねうねと揺らめく鎌首。連打連撃。  油断があったとは思いたくない。だが鬼切の鮮やかな切れ味に没頭していたのは確か。舌打ちまじりの防戦。小刻みに太刀を振るう。押し込まれるのは不利。そもそも俺の性にあってない。三対一なのだ。 「むんっ!」軽い踏み込み袈裟懸け一閃。襲い来る何本かをまとめて払い、開いた間合いに踏み込んだ。所詮は触手。太刀の切れ味には及ばない。数が多いのが厄介なだけだ。  となれば対処は一つ。止まって受けるのは愚の骨頂。移動して狙いを逸らすしかない。ハルピュイアの体躯は巨大。死角は必ずある。そして弱点急所も、だ。俺はそいつを見つけなければならない。 ――ズボゥ! こちらの意図を読んだのか、ハルピュイアは一気に触手を増やした。ビュルルルルルッ! 粘液を撒き散らすホーミング。ジグザグの軌跡。来やがれ! ギリギリまで引きつけ、俺は床を蹴った。
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