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――!
俺の頬を、一筋流れ落ちる温かな何か。
額を掠めたハルピュイアの爪が、眉の上を浅く裂いたのだ。
ちっ!
キィン。と太刀の振動が強まり、骨に食い込んで軋みを上げていた筈の刃が、まるでバターを切るようにゆっくりと沈んでいく。
――うっすらと発光する刀身。
同時に放たれた猛烈な絶叫が、俺の躯ごと鼓膜を振動させる。
巨大な体躯を巻き込んで、長く伸びた大蛇の頭が鎌首をもたげている。
くっ!
意識を集中し、太刀を手前に引き絞ると、急に手応えが軽くなる。
ボトリ。と音を立てて根元から落ちるハルピュイアの指。
ビクビクと痙攣しながら床の上をのた打ち廻る。
しかし背後からは、鎌首をもたげた大蛇が巨大な顎を開いて俺を襲う。
――!
体勢を低めてやり過ごした。
物凄い風圧。
大気を切り裂くようだ。
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