古代神降臨

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 膝を屈めて衝撃をいなし、床に着地した俺の傍らには、ボトリ。と肉片が落ちる。  ビクビクと痙攣する伯爵の右腕。  肩先から切断されて、ビュルビュル。と血飛沫を挙げている。 ――これで、障壁魔法陣は展開出来ねぇだろ! 再び床を蹴って、ハルピュイアの後方へと向かう。  コイツ等の躯の仕組みが、何となくだが分かってきた。  ヒト型の上半身は、細かい作業をする為に合成された『器官』でしかないようだ。本来の頭部は、尾のように伸びた大蛇の鎌首に違いない。  爛々と光る凶眼。憤怒の表情は、ヤツらの不細工な体躯の中で、唯一生き生きと精彩を放っているように感じられる。  俺の目前に、うねうねと踊るような巨大な顎。威嚇の叫びを挙げながら、紫色の細い舌を震わせている。大きく開いた顎の内側には、大小二組の巨大な牙が左右に鋭く光っていた。
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