古代神降臨

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 奇怪で異様な風貌とは裏腹に、優しく慈愛に満ちた女性の声が響く。しかし、言葉の脈絡からはどうしようもない禍々しさが匂う。  巨大化したシュブニグラスの体躯はとうに天井に届いている筈なのだが、空間が歪んでいるらしく、暗闇の中に浮かぶようにしてシュブニグラスは漂っている。  俺は生贄になるつもりはねぇぜっ! 魂を抜かれたように暗闇に立ち尽くすハルピュイアよりも、俺が先に自らを取り戻したのは、鳴り響き続ける、鬼切丸の共振のおかげだったろうか。  俺は太刀を提げたまま、全力で走りだしていた。  右の鎌首に跳ね上げるように太刀を叩き込み、そのまま赤々と光る眼球を狙って突き入れる。  悶絶と絶叫。  吹き上がる血飛沫。  眼球からは、透明なゼラチン質がドロリ。と溢れた。
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