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さてと。俺はスポットライトの真下で背筋を伸ばした。素っ気ないエントランス。無垢の木目とゴツい黒金のフレーム。レトロ調じゃない本物の骨董だろう。サルベージ品かもしれない。磨き上げられた木目からは、ほんのりオイルの香りが漂っている。古びていても手入れが良い証拠。
はめ込まれた真鍮には「One Step Down」の刻印。これまた角が取れるほど磨かれている。店名だろうがよほどの老舗でなければこうはならない。格言じゃなさそうだし、古いジャズナンバーかなんかだろうな。
壁面には窓の類いが見当たらず、中の様子は全く判らない。とにかく入るしかない。覚悟を決めて扉を引いた。
ドアの向こうは白いベール。強力な光源がハレーションの輪を描く。一歩踏み出した瞬間、俺はフロアへと転がっていた。
く、空気投げ? ならばよほどの達人。猛者の襲撃を予感して、身構えながら前受け身。尻に挟み込んだ銃へと手を回し、俺は〈抜く〉か抜くまいか迷った。話が違う。
「くくっくっくっく」響いた笑いに右往左往。しかし、強烈な灯りは完全に俺を眩惑。視覚は白に奪われたまま。抜いたところでクソの役にもたちそうになかった。

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