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「あ。俺のこと、分かるよね?同じクラスだし。こうして話すのは初めてだけど」
渉は明るい調子で凛に話し掛けてくる。
凛は黙ったまま、少し不安気な表情になる。
――…知っている。三枝君はいつもみんなの中心にいて目立つから。
けれど基本的にクラスメイトが凛に関わって来ることはない。
なぜ、彼はわたしに話し掛けてくるんだろう。
「中島ってさ、いつも絵描いてるよな。さっきも渡り廊下にいるの見かけてさ。…何かを真剣に描いてるみたいだから、ちょっと声かけそびれて」
渉は言った。
ということは、彼はさっき凛が絵を描いている姿を見ていたのだろうか。
「何の用…ですか?」
凛は警戒心を緩めない表情のまま、渉に言う。
「お、やっとしゃべった。用ってか…どんな絵描いてんのか気になって。まあ、それだけなんだけど…ってあ」
凛は渉に背を向けて階段を降りてゆく。
何故、彼が自分の絵に関心を持つのだろう。
それが分からない。
…からかっているのだろうか。
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