245人が本棚に入れています
本棚に追加
「…待てよっ。逃げなくたっていーじゃん。俺、中島の描いた絵見てみたいんだよ」
「これから、塾があるから」
凛が構わずに歩きだすと渉はなぜか追い掛けてきた。
「あ、塾かぁ。それは大変だよな…ってそうじゃなくって、待てってば」
昇降口のある階に降り立つと凛は渉のほうを振り向いた。
彼はちょっと拗ねたような表情でこっちを見ている。
「なぜ…わたしの絵が見たいの?」
凛は渉に問い掛ける。
「…え?」
「さっき、わたしの絵が見たいって言ったから」
その理由だけは気になった。
渉が自分の絵を見たいと言った理由が。
「…空の絵」
「え…?」
凛は渉の言った言葉に首を傾げた。
と。渉はズボンのポケットに手を突っ込んで何かを取り出した。
「これ、拾ったんだよ。昼休みに」
そう言って渉が出したのは凛がいつしか描いた―…空の絵だった。
最初のコメントを投稿しよう!