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「三枝!とっくに授業は始まってるぞ。」
そこに現れたのはクラス随一の遅刻魔である、三枝渉(さえぐさわたる)である。
彼は教師に怒られながらも悪びれた様子もなく言った。
「ごめん。センセイ。天気が良すぎるもんだから、うっかり寝過ごちゃって」
軽い調子で言う三枝は、髪も明るい色に染めていて、ピアスも開けている。
いつも人懐っこい笑みを浮かべていて、明るい彼はクラスの人気者だ。
「ふざけたことばかり言ってるな。これ以上遅刻、欠席が増えるようなら補習を行うからな。」
教師に鋭い目つきで言われると三枝渉は首をすくめて席へ戻る。
「相変わらず、馬鹿だなぁ」
「うるさい。ノート見せろって…」
席に戻った三枝は、隣の席の友人と軽くなじりあっていたが、ふと凛のほうを振り向いた。
―…え?
不意に向けられた三枝の視線に凛は驚く。
しかし三枝は再び友人に向き合ってノートの取り合いを再開した。
特に意味なんてないだろう。三枝渉は目立つ存在だからなんとなく目をひいてしまうが所詮かかわりの無い人だ。
凛も大して気にせずに再びスケッチを再開した。
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