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家、もといオンボロアパートの一室の鍵を開ける。
鍵を鞄に入れて、代わりに包丁を右手に持つ。
さぁ、やろう。殺るのよ、亜優。
「ただいま」
ギイッ
「あ、亜優。おかえ――」
ぐさっ
「あ……、ゆ……?」
雷の服に血の染みが拡がる。
「雷、大好きだよ……」
そして私は雷の唇にキスして、雷のお腹から包丁を引き抜いた。
雷の血が、私の頭髪服腕手に、全身にかかった。
雷はそのまま静かに倒れた。
「……正当防衛って言えばいい」
会社の友達もアパートの隣人も、私が暴力を受けていることを知っている。
もし見つかったらそう言えばいい。
まぁ雷は家からほとんど出ないから、臭いさえ誤魔化せばなんとかなる。
「……喉、乾いた……」
雷が死んだ。
私が殺した。
冷水を求めて小さな冷蔵庫を開けた。
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