愛してる。

8/18
前へ
/21ページ
次へ
家、もといオンボロアパートの一室の鍵を開ける。 鍵を鞄に入れて、代わりに包丁を右手に持つ。 さぁ、やろう。殺るのよ、亜優。 「ただいま」 ギイッ 「あ、亜優。おかえ――」 ぐさっ 「あ……、ゆ……?」 雷の服に血の染みが拡がる。 「雷、大好きだよ……」 そして私は雷の唇にキスして、雷のお腹から包丁を引き抜いた。 雷の血が、私の頭髪服腕手に、全身にかかった。 雷はそのまま静かに倒れた。 「……正当防衛って言えばいい」 会社の友達もアパートの隣人も、私が暴力を受けていることを知っている。 もし見つかったらそう言えばいい。 まぁ雷は家からほとんど出ないから、臭いさえ誤魔化せばなんとかなる。 「……喉、乾いた……」 雷が死んだ。 私が殺した。 冷水を求めて小さな冷蔵庫を開けた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2050人が本棚に入れています
本棚に追加