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「な、なんで…っ」
彼女は答えず、唇を堅く引き結んだまま僕の腕を引いた。
「入るぞ。」
屋敷に入ると、すぐに中年の女の人が出てきた。
「喜乃(きいの)様っ!!」
(きいの…?)
その女の人は僕達に駆け寄ってくる。
「今まで、何をして…」
女の人は僕に気づき、言葉を止めた。
「喜乃様、この方は…?」
そう言って女の人は、僕を見つめた。
そして僕の痣に目を止める。
僕はその痣を隠すように手で覆った。
「喜乃様…。」
「じ様に会わせるから。」
「は?」
「じ様に合わせるから。じ様どこ?」
「え、あ、はい。奥のお部屋にいらっしゃいます。」
「わかった。」
そう言うと、彼女は僕の手を引いて一番奥の部屋へと向かった。
さっきの女の人は、何も言わず心配そうに僕を見ていた。
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