prologue

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「大丈夫か?」 涙も止まり、やっと僕が落ち着いた頃に彼女が声を掛けてきた。 「うん…。」 僕は膝を抱えたまま、ただ小さく答えた。 「そうか。なら帰ろう、家に。」 (“家”…っ。) その言葉が僕を現実へ引き戻した。 (そうだ…。家に…帰らなきゃ…行けないんだ…。) 僕は先ほど感じた温かなものが急激に冷めていくのを感じた…。 彼女はそんな僕を黙って見ていた。 僕は知らなかった。 “家”という言葉を聞いた時、僕がびくりと肩を震わせたことを。 そして彼女が軽く目を見張りながら、それをしっかりと見ていたことを…。 .
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