prologue

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「家がわからないのか?迷子か?」 いきなり黙った僕を不審に思ったのか、彼女は僕の顔を覗き込んできた。 「ううん…。わかるよ…。わかるんだけど……」 僕は俯いたまま膝を引き寄せる。 その時、僕の袖の間からちらりと痣が見えた。 僕はそれに気づかない。 「そうか。なら行こう。」 彼女は僕の腕を掴み、ぐいっと引っ張った。 「え!?ど、どこに!?」 僕は慌てながら、彼女に尋ねた。 「家だ。」 「え…。」 僕は目の前が真っ暗になった。 「家に帰るんだ。」 その言葉に奈落の底に突き落とされたような感覚を受ける。 やめて。 「だ、大丈夫だよ。」 やめて。 「僕は一人で帰れるから。」 その手で… 「一人で大丈夫だからっ!」 さっきまで触れてくれた… 「ちゃんと帰れるからっ!!」 その温かい手で… 「もう少し経ったら帰るからっ」 僕を“あそこ”になんか連れてかないでっっ!! 「ちゃんと帰るからっっ」 さっき感じたものを… 「家に…帰るからっっ!!」 無くしたくないから… 「だから」 だから… 「何を言っている?」 「え…?」 「行くのは私の家だ。」 そう言うと彼女は、僕の手を引いたまますたすたと歩きだした。 (え…?) .
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