奇跡⑤

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台所に行くと私が来るのを知っていたかのようにコーヒーが2杯入れてあった。 「……………」 無言でイスにすわった。 「ほら、佐織の好きな抹茶のオールドファッション。」 お母さんはドーナツを皿に取り分けてくれた。 「……………………お母さん……」 「なぁに?」 ドーナツに手をつけずに固く握りしめる手が震えていた。 「………あのね…あのね?………妊娠…したかもしれない………」 「……………」 私の告白にお母さんは黙っていた。 怒られるんだろうか………… それともバカな娘だと泣き崩れるんだろうか………… 不安が爆発しそうになって鼓動が激しかった。 「……そんな事じゃないかと思ってたよ」 「……へっ???」 意表をつかれて驚いてる私をみてお母さんは笑っていた。 「あのねぇ、この家を誰が掃除してると思ってるの~?佐織の生理の周期なんて知ってるからね。最近生理ないなぁ…とか、最近元気ないなぁ…とか思ってたのよ」 さすが……… お母さん……… 驚いたせいか緊張はとけ自然に笑顔が出た。 「でも………今回はあきらめなさい」 急にお母さんは真面目な顔で私に告げた。
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