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「すぐに、とは言わないよ。隼人と別れたらでいい。」
そう淡々と言ってのけるその目は真剣そのもので、とても冗談を言っているようには見えない。
「…いや、でも、…今のところ、別れる予定なんてないですし…あはは…」
なんとか笑って誤魔化そうとするものの、ますます顔は近づいてきて、
あたしは思わず、顔を背けた。
「…契約だ。
隼人と別れたら、俺と付き合え。」
そう耳元で囁かれ、耳たぶをなぞるように息がかかり、ぞくっと背中が震える。
「…け、契約?」
サッ…
あたしの返答も待たずに、彼はきびすを返して、去って行った。
あたしは、何も言えず、壁にもたれかかったまま、呆然とその後ろ姿を見送り、
その姿が見えなくなると、へなへなとその場にしゃがみ込んだ。
「…なんか…怖かったぁ…」
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