恋人

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恋人とは、いったい何なのだろう 恋人を語る上で必要不可欠なのが、愛情の定義だ よって、まずは愛情の定義について思考しよう 愛情というものは案外、脆くて弱い物だという事を知っているだろうか 昨日まで愛していた人を、今日から愛せなくなる その様な事はよくある事だ 何故なら、愛情という物は、突き詰めて言ってしまえばただの依存だからだ はっきり言って、友達を作ったりするのと一緒 要は他者を求める行為だ 人間の精神という物は不安定であり、不安定故に支えを必要とするが、その支えは人によって様々である ある者は宗教に持たれかかり ある者は自己の自尊心に持たれかかる そして別の方法として、他者の存在に持たれかかる そのようにして人間は、自己の精神の安定を図る そして、数ある精神安定の方法の中で、一番効率がいいのが、他者に依存する事なのだ 他者に依存する事によって、安定すると共に、己が孤独でないという錯覚を生み出す それのハイエンド級が愛情だ 他者に対して愛情を抱けば、己も他者から愛情を受けていると思える それによって、相手も自分に依存しているという事を認識し、相手が離れないと思う それによって不安要素が取り除かれ、更に相手に対して依存出来る 愛情というのはこの依存の繰り返しだ ならば、愛情が消えるというのはどの様な場合か 答えは一つ 相手が持たれかかる対象として不適と判断した場合だ よって、もしも相手の愛情を薄れさせたくなければ、支えに適した存在になるしかないのだ これらの思考をする事で、恋人の定義が簡単になった 恋人とは、精神安定を図る為に最も適した道具である 恋人とは名ばかり、実際の所、己が依存・安定するための道具なのだ そう考えると、恋人と言われるのも悲しくなってくるものだ しかし、世の中の人間は喜んで恋人という名の道具に成り下がり、相手を恋人という名の道具としてみる 要は、それだけ人間の精神が不安定だという事なのだろう そして、一番恐ろしいのは、他者を道具と見なす行為を、人間が無意識の内に行うという事だ 依存がある限り、人間に真の清らかさは生まれない
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