Side:KAITO

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変な男に会った。 いきなり近づいてきて。 馴れ馴れしく話しかけてくる。 月明かりしかない暗い森の中で真っ黒なサングランスをかけた男。 貴方に逢ったその日から Side:KAITO 「コンバンハ、オニーサン」 「………」 「ちょ、オニーサン無視は酷くない?」 「…、………」 「やっぱ無視なのかよ!」 これで何度目だろう。 毎夜毎夜、話しかけてくるこの男。 名前もしらない相手に何を話せというんだろう…。 あの日は眠れなくて…。 眠れないのはいつもの事だけど、あの日は何故か外に出てみようと思った。 真夜中の森は涼しくて不思議と居心地が良かった。 空に浮かぶ月は淡く光っていて綺麗だ。 暗闇に目が慣れてくると昼間見かけない生き物も見かける。 こんなにゆっくり、こんなに穏やかに、森の中を歩く事なんてなかったから。 とても、とても楽しい。 これからは眠れない夜、外に出てみるのもいいかも。 そう思い掛けたとき… 「ハジメマシテ、オニーサン」 不意にかけられた声。 声の主はひらひらと手を振りながら近づいてくる男だった。 ジョーカーさんが『知らない人から話しかけられても知らん振りするんだぞ』って言ってたっけ…。 俺は男を無視するとそのまま家に帰った。 あの男…嫌な感じはしなかった。 なんで俺に話しかけたんだろう…。 不思議と沸き起こったのはあの男への興味。 俺はその日から毎日森に行くようになった。 相変わらず返事はしないけど、『コンバンハ』とかけてくれるあの男の声を心の何処かで待ってる自分がいる。 今度は名前でも聞いてみようか…。 俺はひっそりと笑みを零した。 変な男に会った。 いきなり近づいてきて。 馴れ馴れしく話しかけてくる。 月明かりしかない暗い森の中で真っ黒なサングランスをかけた男。 変だけど優しく暖かな光のような男だった。 -END-
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