『やきもきヤキモチ』(傲慢ダーリン番外編)

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『気をつけてね』と舞に見送られたのは今から15分前。 塾が6時からだったので、それまで駅前のファミレスで時間潰しに付き合ってもらっていたのだ。 教室のドアを開けると、ガチャッという音に反応していくつかの瞳が一瞬だけこっちを向いた。 1週間通っても慣れないこの雰囲気。 みんな机の上の参考書や暗記本とにらめっこしている。教室内に聞こえる会話と言えば友達同士で来ている子達が、小テストの範囲を確認しあう声くらい。 ほんとに静か。 窓際の後から4列目。なんとなく、前回座っていた席に今回も荷物を置いて、出来るだけ静かに椅子に腰かけた。 日本史の暗記本をバックから出して一応広げてみる。で、今気がついた。 範囲どこだっけ…? 一瞬、2つ前に座る女の子に聞いてみようと思い腰を上げたのだけど、隣に座る友達と勉強の話をし始めた姿を見て、タイミングを思いきり逃した私は浮かした腰をすぐさま下ろした。 き、聞けない。 他に誰かいないかな。 教室内を遠慮がちに見回してみるけど、聞けそうな相手は見当たらず。 いっか。 小テストだし。なんでも。 そんな感じで半ば諦めて暗記本を閉じた私の元に、斜め上から声が降ってきた。 「13ページから25ページ」 声のした方に振り向くと、小さく微笑む整った顔と目があった。
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