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「名前、聞いてもいい?」
駅への道のりを数歩歩き始めてすぐにそう言われた。
大きめの黒い綺麗な瞳に先を促されて、自分の名前を告げる。
「由香里ちゃんか。
俺は茂人。黒崎茂人。
改めてよろしく」
「うん。よろしく」
真面目で受験モードの子ばかりが集まる塾(※受験生なんだから当たり前です)。
友達なんて出来ないものだと覚悟していたから、今の状況が嬉しい。
茂人くんは優しい人みたいだし。
「あの塾、知り合いもいないし少し不安だったんだよね。だから由香里ちゃんとこうやって話せて正直ほっとしてる。
受験は孤独な戦いだってよく言うけどさ、やっぱり仲間がいた方が心強いじゃん?」
今自分が思っていた事と同じ事を告げた彼に少しばかり驚いた。
「私も同じ事思った。私勉強苦手だからさ、1人じゃないほうが頑張れそうなんだよね」
「そっか」
初めて会った人なのになんだかそんな感じがしないのは、茂人くんの雰囲気のおかげなのかな。
「にしても、この時間に終わると腹も減るよなー」
「そうだねぇ」
テストの出来の悪さにげんなりしていたせいで忘れていた空腹感が、茂人くんの言葉に反応して戻ってくる。
今にもお腹が鳴りだしそう。
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