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自分に言い聞かせる様に呟くと、最後の一本。
橙色に光る刀に近付いた。
刀に手を掛けようとした瞬間。
黄牙の体を真っ赤な炎が取り巻いた。
声を押し殺し必死に絶える黄牙。
刀を手に取るとその炎の勢いが増し黄牙の服が次第に燃え始めた。
服が燃える、其れは黄牙の気が妖刀の気に負け始めた証拠。
銀牙は青牙をその場に寝かせると急いで黄牙の元に向かった。
しかし、黄牙が其れを制した。
「来ないで!!俺…頑張るから…」
「馬鹿言え!死んだらどうするんだ!!」
「死なない!!俺は…コイツを連れて帰るんだ!!」
「…そんな事言ってる場合じゃねぇだろうが!!」
「嫌だ!!」
「黄!!手を離せ!!」
「嫌だ!!!俺は…俺は負けない!!!俺と共に来い『焔(ほむら)』!!!!」
火事場の馬鹿力とでも言おうか。
最後の最後に数秒にも満たない間だが妖刀の気を上回った黄牙。
ボロボロになりながらも何とか妖刀を手に入れる事が出来たようだった。
「ヘヘヘ…やった…ぜ……」
と、黄牙は笑いながら倒れた。
銀牙は溜息をはくと其々妖刀にお札をはり、黄牙と青牙そして妖刀を手に洞窟を後にした。
帰り道、息子二人の成長振りに銀牙は何処か嬉しそうな表情を見せていた。
「青はもう少し気を強くしてから氷雨を扱う訓練だな」
「はい」
「黄は…問題外だ!まだまだ危なっかしくて焔は渡せねぇな!!もっと修行しろ!」
「それまでは私が封印しておこう」
「そ、そんなぁ~~~~~!!!!!!」
明け方、目を覚ました二人にそう告げる銀牙。
素直に返事をする青牙とクスクスと笑う銀牙と傷の手当をしている白夜、そして情けない声を上げる黄牙を朝日が照らしていた。
-END-
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