簾動かし、

7/24
前へ
/90ページ
次へ
「おおおええああええおおおおおおえー」 放課後。 鬱っぽいメロディと共に雫子が部室に入って来た。 「お、寧。頑張ってますねー」 「おう」 ノートに何やら書きなぐっている寧は適当に答えた。 「ニカは来てないの?」 雫子は鞄からアダプタを出した。 「掃除当番」 「なる」 雫子は部屋の隅のコンセントにアダプタを差し、携帯電話のバッテリーを充電し始めた。 「電気泥棒」 「櫻庭ちゃんみたいな事言わないでよ。あ、お土産。うっかり渡し忘れてたよ」 そう言うと今度は鞄から袋を取り出した。 「はい」 「なんぞこれ?」 「お煎餅」 「……赤くないか?」 「辛子煎餅。皆で食べて」 袋の中には真っ赤な煎餅が詰まっていた。 「……寧」 「あとでな」 手を止める事無く寧は答えた。 「…………」 さあこの煎餅をどうしようかと悩んでいると、仁川が部室に入って来た。 「おくれてごっめぇーん!」 「あ、そうそう」 今度はプリントを出して僕に渡した。 「伊藤先生から。文化祭で使いたい教室、第三候補まで決めとけって」 「お、さんくー」 「…………」 リアクションが無いと見るや仁川は部室の本棚から文庫を取り出し、読み始めた。  
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加