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眠気を押し返しながら買ったばかりの「氷菓」を四分の一ほど読み進め、栞を挟んで鞄に仕舞った。
朝のバス停。
サラリーマン、学生、けばけばしい女性、老人、様々な人が冷房の効いたバスを今か今かと待ちわびている。
九月になったって暑いものは暑い。暑さが和らぐわけでもないけれど、周りを見渡す。
本当に色々な人がいる。
野球部だろうか。学校名と名前入りの黒いショルダーバッグを掛けた伸びかけ坊主頭の男子高校生は、彼氏に一晩中突かれて喘いでいたようだ。しきりに欠伸をして瞼を擦っている。別のバスを待つ列に、その彼氏がいた。二人とも一定感覚でケータイをいじっている。メールでもしているんだろう。お幸せに。
その彼氏の三人後ろにいるOLは、寝る前に腋毛と脛毛とビキニラインの処理をして、ついでに鼻毛と眉毛も整えたが、そのせいで寝る時間が遅くなったらしい。メイクが気になるのか、鞄からしきりに鏡を取り出し、覗きこんでいる。みだしなみは大切だけど、夜更かしすると肌荒れますよ。
椅子に座っている黒い帽子の青年は………………エグい事してますね、お兄さん。水商売ってそんなもんかな。
一通り見回し、眼を閉じる。
ああ、
今日も世界は
緩やかに歪んでいる。
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