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子供の頃。
お寺の神木を登っている途中、そこから落ちて頭を打った。
半日昏睡状態の後、眼が覚めるとこの力を身に付けていた。
他人の記憶を探る力。
探れるのは『始点』から大体十二時間。
ちなみに、一番最初に探ったのは僕を担当していた看護師の記憶。
ごめんねー、子供の急患入っちゃって今日駄目になっちゃったー。代われないのよ。本当ムカつくわー。
退院するまでの一週間、その看護師には、子供として出来る限りの嫌がらせをした。
探ろうとしなければ記憶が見える事も無いので、コントロール出来なくて発狂寸前、なんて事は無かった。
けど、面白半分に記憶を探って、する必要の無い嫌な思いをいくつもした。
ごめんね、昨日は親戚の用事があって。
そう言って待ち合わせをすっぽかした事を詫びる友達は、別の友達と楽しそうに遊んでいた。
そんな事無いよ。
最近自分の事を避けていないかと訊ねたらそう答えたクラスメイトは、昨日の夜、電話であいつ最近鬱陶しいと友達に愚痴っていた。
そんな事ばかり繰り返している内に、
そんな事ばかり続いていく内に、
僕は、
世界と繋がれなくなった。
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