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「いやああああああ!!!」
「アリス落ち着いて!」
一人の女性が悲鳴を上げた。
周りには友人らしき人物が悲鳴を上げた女性を含め6人で一つのテーブルを囲んでいる。
彼等のいる小さな喫茶店には他に客がいないようで、店内には女性の悲鳴を妨げる障害がなく声がよく響いた。
「で、でも…本当に、怖いよ~…」
グループの中で綺麗な顔立ちにキリッとした目元が特徴的な女性が悲鳴の主である女性をなだめている中、小柄でか弱そうな少女と呼ぶのがふさわしいだろう女性が悲鳴を上げた女性に抱きつきながら同じ様に震え目を潤ませながら仄かに呟いた。
小さな体を雨に濡れた仔猫のように微かに震わせて抱きつく腕が服をしっかりと握り恐怖を物語っている。
可憐なその姿は恐怖すら華に変えるようだ。
「もう、クリス!あんたが変な話をするからアリスとローザがすっかり怯えちゃったじゃない!!!」
「変な話じゃない!今一番新しくて注目の噂話だ!!!」
なだめていた女性がキッ、と睨むと悲鳴の元凶であるクリスと言う青年が熱弁をふるって反論したが、あえなく怒りの篭った鉄槌を一瞬の間に受け黙る形となった。
倒れた彼は白眼をむいて気絶しているが特に心配する者はいない、全員の目が当然の酬いだと語っている始末である。
「ケティ、その位で勘弁してやってくれ」
少し間をおいて、倒れたクリスの隣に座っていた物腰穏やかそうな黒髪の男性が状況に慣れているのか、落ち着いた様子でなだめたり鉄槌を下したりと忙しいケティにやんわりと静止の声を掛けた。
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