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「話はわかったわ」
「やっぱ君エスパー?」
「あなたに用事はあるけど、大したことじゃない筈よ」
「そうなんだ。じゃあ早く帰れそうだね」
「そこで少しでも残念がってくれると嬉しかったなぁ……」
「うん?なんか言った?」
「別に」
「そう?でさ、用事って?忘れてたりとかしないよね?」
肝心な事を忘れていたらもともこもないからな。
「うーんと、えーっと……あれ?」
必死に思い出そうとしているということは……。
「まさか?お約束の……?」
「ア、アハハー……そのまさかです」
「ええっ!?じゃあどうやって戻るんだよ!?どうすんの!?せっかく戻り方わかったのにさ!!」
俺は焦りからか、声を張り上げてしまった。
それがいけなかった。
「私だって思い出したいよ!!いきなりタイムスリップとかしてさ!迷惑してんのよ!
学校で友達と喋ったり部活したり、恋だってしたかったよ!!普通に生活したかったよ!!
……もう、訳わかんないよ」
それだけ言うと、香純は申し訳なさそうに顔を伏せた。
そこで、俺はやっと、自分の犯した過ちに気付いた。
香純は今回の事件の、言わば被害者だ。それなのに、冷静に悩んで答えをだそうとしていた。
不安、焦りは俺の何倍も感じていた筈なのに。
それなのに、俺はほぼ人に頼り切り、香純を慰めたりもせず、ただ帰す事だけを……。
俺のバカヤロォ!
過ちに気付いた。
次にすることはもちろん。
「すまない!香純の気持ちを考えてやれてなかった!本当にすまない!」
俺はそう言いながら土下座した。
「パ、パパ!いいよ、そこまでしなくても……!」
香純は何とか頭を上げさせようとあたふたした。
「……お詫びといっちゃなんだが、思い出すまでここに居ていいからな」
「ふぇ!?い、いいよ!泊まるとこなら自分で探すし……」
「遠慮しないの」
「だって、いいの?」
「大歓迎だ!」
そう言って俺は軽く笑った。
「じゃあ……よろしく、パパ」
香純が微笑みながら差し出した手を、俺は立ち上がってしっかり握った。
「よろしくな、香純。あ、パパは止めて貰えるか?何だか恥ずかしいや……」
「わかった。改めて宜しくね、……純」
こうして、俺と香純の共同生活は始まった。
「一段落したから取り敢えず風呂入るわ」
「本当に反省してんの?」
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