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時は夕刻。
真っ赤に染まる町並みを、人々は早足で歩いている。
その様子を俺はバスの車内からぼーっと眺める。
俺は、神足 純(こうたり じゅん)。
地元の高校に通っている16才の2年生だ。
不意に慣性の法則がはたらき、体が揺さぶられる。
外を眺めているうちに降りなきゃないバス停についたようだ。
俺は定期を見せつつ、バスを降りた。
ここは団地前なので、降りる人が多くて困る。
中には同じ高校のやな奴もいるので、あまり関わりたくないの。
まだ人を吐き出しているバスを尻目に、俺は俯き加減で歩きだす。
別に、いじめを受けてたりしているわけではない。
現に俺は友達の数も顔も成績も人並みだし、優しい性格だ。
俯いているのは、ただ単に疲れてるだけ。
ぼーっとしながら歩いていたら、自分の家を過ぎていた。
周りに誰もいないのを確認して家の前までもどる。
「俺、疲れてんだな……」
一人なのにそんな言いわけをしながら家の鍵を差し込む。
少々てこずったが、向きをかえたらすんなり入った。
俺は何事もなかった様にして鍵を開け、扉を開き中に入った。
因みに今は一人暮らししている。
親父は俺が3つのときに事故で死んだ。
母親は有望な社員だからと、海外で事業を任されている。
つまり単身赴任だ。
会うのはたまに顔を見せにくる時だけ。
それ以外の繋がりといえば仕送りぐらいだろうか。
こんな設定なのは、まぁ、察してくれ。
そして、俺は靴を脱ぎつつ中に入った。
その途端、俺は違和感を感じた。
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