田辺さん

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「え……居るでしょう?」 「ど~かな~?」 そう言って田辺さんは寂しそうに笑った。 ……そんな田辺さんの顔を見るのは初めだった。 いつもみたいにニヤニヤした笑い方じゃなくて、本当に悲しそうな顔。 「………居ますよ。田辺さんが居なくなったら悲しむ人」 「え…?」 「私……田辺さんが居なくなったら悲しいですよ。何故かよく分かりませんけど……田辺さんが居なくなるのはイヤです」 「紗弥ちゃん……」 「何てねっ!田辺さんが退院されたら、私達の関係は無くなっちゃいますし」 自嘲気味に私は笑った。 所詮私達の関係は、患者としがない看護学生。 実習が終わってしまえば、それまでの関係だ。 田辺さんが退院したら……もう二度と会う事は無くなる。
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