1673人が本棚に入れています
本棚に追加
「え……居るでしょう?」
「ど~かな~?」
そう言って田辺さんは寂しそうに笑った。
……そんな田辺さんの顔を見るのは初めだった。
いつもみたいにニヤニヤした笑い方じゃなくて、本当に悲しそうな顔。
「………居ますよ。田辺さんが居なくなったら悲しむ人」
「え…?」
「私……田辺さんが居なくなったら悲しいですよ。何故かよく分かりませんけど……田辺さんが居なくなるのはイヤです」
「紗弥ちゃん……」
「何てねっ!田辺さんが退院されたら、私達の関係は無くなっちゃいますし」
自嘲気味に私は笑った。
所詮私達の関係は、患者としがない看護学生。
実習が終わってしまえば、それまでの関係だ。
田辺さんが退院したら……もう二度と会う事は無くなる。
最初のコメントを投稿しよう!