田辺さん

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コンコン。 私はいつものように、ノックをする。 「失礼しまーす。田辺さんバイタルサイン測定に来ました~」 そして、シーツを思いっきり剥ぐ。 田辺さんは未だに夢の中だった。 この人は……朝食終わったらすぐに2度寝したな……。 田辺さんの担当になってから2週間。 私の朝はバイタルサインの前に、田辺さんを叩き起こす事から始まる。 「たーなーべーさぁーん。起きて下さ~い。バイタル測らせて頂きたいんですが?」 肩を揺らし、起こそうとしてもなかなか起きない。 「田辺さぁん起きて~」 ゆっさゆっさ揺らしても起きない。 ………患者さんじゃなかったら、ハッ倒してるよ……。 「も~……起きないなぁ……。また今日もアレを言うのか……」 アレとは、なかなか起きない田辺さんが一発で起きる正に魔法の呪文………って言うか嫌がらせだろって感じなんだけどな。 数回深呼吸をし、私は意を決してあの言葉を耳元で言った。 「ご主人様……早く起きてぇ…?じゃないと紗弥……寂しくて泣いちゃうっ……」 「おっはよ~紗弥ちゃん」 「……………おはようございます。目……覚めたようですね……?」
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