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武志君、すごいんだよ、向こうにかなり大きな本屋さんが、建ってるんだ。今日オープンしたみたいだから、行ってみようよ。
さっきまでの道隆とは思えないほど、明るく楽しそうな道隆が目の前ではしゃいでた。
普段なら、新しくできた、ましてや大きい本屋なら飛んで行くところだが、時間的に家に帰らないと怒られる時間なのと、武志が知らない本屋がいきなりできてることへの驚きもあり、
今日はもう帰らないと行けないから、やめとく。
と、道隆に言った。
それなら仕方ないから、僕だけ行ってくるよ。
そう笑顔で武志に話しかけ、道隆は走りさって行った。
複雑な気持ちになりながらも、武志は時間を考え、本屋をあとにし家に向かい歩き始めた。
その時、本屋の方から、武志の名を呼ぶ声がしたので、振り向いてみると、そこには道隆の姿があった。
武志君ひどいな1人で帰ろうとして。
さっき道隆は、新しい本屋に向かって行ったはずなのに、何故本屋から…
いや、だって新しくできた本屋に…
と、道隆に話し掛け始め、とんでもない違和感に武志は気付いた。
道隆の服装が、まったく違うのである。
正確に言うと、つい先程別れた道隆の服装が、学校から一緒に本屋にきていた、今目の前にいる道隆の服装とまったく違うのに気付いたのだ。
何が起きたのか、理解できず、半ば放心状態のまま、武志は家路についたのである。
後日わかった事だが、新しい本屋はどこにも建っていなかったのだ。
また不可解な事と言えば、道隆も武志と一緒に行った本屋から、帰りかけてる武志に声をかけるまで、一歩もその本屋からでてないという事、そしてなによりも、道隆の服装がまったく違ったという事である。
武志は思う、あのまま道隆と一緒に、新しい本屋という所に行っていたらどうなってたのだろうか。
それとも、立ち読みを終えて一瞬寝てしまい、夢でも見てたのだろうか。
きっとそうだ、あまりにもリアルな夢を見ただけだろうと、武志は自分に言い聞かせ、この出来事は胸の奥底にしまいこんだのである。
そう、ただ単に、リアルな夢の時間をすごしただけなのだと…。
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