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……………。
しばらく無言の会話が続いた。
『あのさ』 『あのさ』
『あっ、ごめん。そっちからでいいわよ。』
『あのさぁ…楓。』
やっべぇ…。何て言おうとしたんだっけ。
『こ、この料理旨いな!』
『え?あ、ありがとう。』
楓は下を見ながらモジモジしている。ほめられて、照れてるのか?
なっ!?
不意に、楓は落ち込むような、表情を見せた。
なんだ?こんな顔の楓、見たことない。
その顔を見てどうかしちまったのか、俺はこの場で聞くべきことじゃないことを聞いてしまった。そんときの俺は、今しかないと思ったのだろう。
『あのさぁ楓。なんでお前は、こうも俺にいろんな事をしてくれるんだ?』
楓が一瞬、ビクッとなって、それから今まで聞いたことのないような小声で、
『そ、それは…。えっと……。その……。』
な、なんなんだよ、最近の楓!なんか調子狂う。
嗚呼なんだか頭の中が混乱してきた。
『わ、わりぃ楓。なんか聞いちゃいけないこと聞いちまったな…。飯旨かったよ。ありがとう。両親によろしく伝えてくれ。じゃあ、俺はそろそろ。』
すると、俯いた(うつむいた)ままの楓から思いもよらぬ言葉が。
『待って!!』
思わず振り返る俺。
楓は俯いたままだ。
『ごめん、やっぱりなんでもない。私こそ今日はありがとう。じゃあ……おやすみ……』
『ああ…おやすみ。』
俺はそそくさと玄関のドアを開け、自宅に向かった。
俺は手を洗うと直ぐさま、自分のベットに横たわった。
さっきの楓が頭から離れない。
っちくしょう。俺、やっちまったかなぁ。
その日は明け方まで眠れなかった。
第二章『佑と楓』完
第三章に続く
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