第三章『楓の過去』

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ピンポーン   俺は再び、楓宅のインターホンを押した。   『…はい。どちらさまでしょうか。』 その声は、楓では無かった。 『あの…。楓さんの友達の綾瀬っていいます。昨日の御礼をと思って。』 『綾瀬…君?あぁお隣りの。ちょっと待っててくださいね。』   出て来たのは、俺の両親より5歳くらい若そうな女性。 『えっ?』 その女性は驚いた表情で俺を見つめる。 『あ、あの…。どうかしたんですか?』 『い、いえ。何でもないの。せっかく来たのだから少しあがっていって。お茶をご馳走するわ。』 そう言って俺を中に招き入れるその女性は楓によく似ていた。   昨日、俺が座った場所にその女性が座り、向かい側に俺が座った。 『貴方が綾瀬君…。楓からよく聞いてるわ。』 『はぁ。そうなんですか。ところで、貴方は一体…。』 『あっ、ごめんなさい。申し遅れました。私は楓の母の渚(なぎさ)です。』 母親だったのか!随分若く見えるが…。 『あの。さっきは何で驚いていたのですか?何かついてました?』 『いえ、そういう訳じゃないの。ただ…。』 『ただ?』 『……うん。貴方には話して良い気がする。』
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