51人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
ピンポーン
俺は再び、楓宅のインターホンを押した。
『…はい。どちらさまでしょうか。』
その声は、楓では無かった。
『あの…。楓さんの友達の綾瀬っていいます。昨日の御礼をと思って。』
『綾瀬…君?あぁお隣りの。ちょっと待っててくださいね。』
出て来たのは、俺の両親より5歳くらい若そうな女性。
『えっ?』
その女性は驚いた表情で俺を見つめる。
『あ、あの…。どうかしたんですか?』
『い、いえ。何でもないの。せっかく来たのだから少しあがっていって。お茶をご馳走するわ。』
そう言って俺を中に招き入れるその女性は楓によく似ていた。
昨日、俺が座った場所にその女性が座り、向かい側に俺が座った。
『貴方が綾瀬君…。楓からよく聞いてるわ。』
『はぁ。そうなんですか。ところで、貴方は一体…。』
『あっ、ごめんなさい。申し遅れました。私は楓の母の渚(なぎさ)です。』
母親だったのか!随分若く見えるが…。
『あの。さっきは何で驚いていたのですか?何かついてました?』
『いえ、そういう訳じゃないの。ただ…。』
『ただ?』
『……うん。貴方には話して良い気がする。』
最初のコメントを投稿しよう!