第二章『佑と楓』

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俺の家の隣に新しい家が建ったのは知っていたが、その家の住人が、楓一家だったなんて、楓が転校して来た次の日まで知らなかった。   お隣りさんということで、挨拶には来ていたらしいが、俺はその時、友達(後に紹介する)と一緒に出掛けていたから会わなかった訳で、うちの両親も、そこの子供が俺と同級生だとは聞いていなかったらしい。   楓が何故俺を起こすのかはわからない。ひょっとして俺に気があるのか? …んな訳ないか。まだ転校して来て一週間だしな。 楓が隣に住んでるのに気付いたのは、さっきも言ったが、楓が転校して来た次の日だ。   楓が転校して来た次の日、俺はいつもよりも30分ほど早く目覚めた。前の日にいつもより早く寝たからだろうな。 俺はいつものようにカーテンを開けた。 すると目の前に見えたのは……。 朝日を浴びる気持ち良さそうな楓だった。   『あーっ!』   俺と楓は同時にそう言った。   『な、な、なんでアンタがこんな所に居るのよ!』 『なんでって。ここが俺の家であり、部屋だからな。』 『そんなことはわかってるわよ!』 じゃあ何故聞くんだ。 『と・に・か・く!アンタの部屋が私の隣にある時点で、私より早く起きることは許さないから!』 『なんでそうなるんだ…。』 『なんでって。こんなか弱いレディが隣の部屋で寝ていたら、誰でも襲いたくなるじゃない!』 『なるほど…。ってそんな理由で納得するか!』 まぁ、いつもは今日より30分は遅く起きるし、問題は無いか。 『ん~…。』 楓がなにやら悩んでいるが。 『なんか昨日は遅刻ぎりぎりに学校来てた気がするから、明日から私が起こしてあげようか?』 『冗談じゃない。余計なお世話だ。なんで朝からお前の顔を見なくちゃ…』 …いけないんだ!と言おうとしたら、 『別に冗談でも何でも無いわ。毎朝起こしてあげるんだからむしろ感謝してもらわないと。』 毎日って休日もか? そう頭の中で思ったと同時に口に出していたらしく、 『勿論じゃない。ただし、平日より一時間は遅くしてあげる!』 ったく…。ますます余計なお世話だ。   と、こんな感じで毎朝起こされるハメになった俺。 まぁそれから生徒指導の斎藤には怒鳴られずに済んでるから、そこは感謝だな。 にしても、なんでわざわざ起こしてくれるんだか…。 結局理由はまだわからん。 乙女心ってやつか? 男の俺にはそれすらかもわからないな。
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