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ピンポーン…。
…返答がない。
ピンポーン…。
すると、ドタドタと階段を下りる音が聞こえてきた。
『うるさいわね~。聞こえてるっつうの!!』
楓の声だ。
玄関の斜め上の小窓が開いているのに気付いてないのか、はたまた聞こえるようにわざと言っているのか。
真相はわからないが、玄関のドアを開けた楓は、さっきとは全く違う態度で、
『さっ、入って入って!』
と俺を中に招き入れた。
つうか、俺だってわかってたのか?
『だって階段の窓から見えたもん。』
じゃあさっきの愚痴はわざとか?
『え?私愚痴なんか言った?』
なんなんだコイツ…。
まぁ晩飯ご馳走になるからそんなこたぁいいか。
『って、そういやさっき二階から下りて来たが、飯は作ってなかったのか?』
『大丈夫。ご飯はもう炊いてあるし、さっきはおかずを煮込んでる間、ちょっと用があっただけ。あと少しだからもうちょっと待ってて!』
『ああ…。』
礼を言おうとしたが、タイミングを逃したので、あとででも良いだろう。
んで……。これが楓ん家か。さすがに片付いてるな。ってリビングだし当たり前か…。
すぅ…と息を吸ってみる。
人ん家の匂いがするな。なんか新鮮だ。まぁ結構、新築だし。
そんなことを考えていると美味しそうな別の匂いが。
『さっ、できたわよ~!』
と楓がキッチンの方から次々と晩飯を運んで来た。
意外に豪華だな…。
『これ、全部楓が作ったのか?』
『そっ!意外だった?』
ま、まぁな。一見、というか俺が見るかぎり、活発で料理があまり上手そうでは無いイメージがあったが。
人は見かけに寄らないということを改めて実感した。
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