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その日。その時。
秘密組織である、紐育華撃団星組隊長 兼 リトルリップシアターのモギリを務める大河新次郎は、所用で秘書室へ向かっていた。
所用というのは何の事は無い。
シアター内での仕事が済んだら、秘書室へ顔を出して欲しい。と、ラチェットに言われて居たからだ。
用件の大方は想像がつく。きっとまた何処ぞへお使いを頼まれるのではないか─。
そう深くは考えずにエレベーターを降り、屋上を歩く。
ふと、屋上から眺められる紐育の街並みが眼に留まり。新次郎は縁へ寄って手を掛けた。
今でこそ平和に見えるこの紐育も、ほんの数ヶ月前には未曽有の危機に陥っていた。
遥か昔。戦国時代の日本に於いて魔王と呼ばれ畏れられた織田信長が紐育に復活、アメリカならずも世界までもその手中に治めようとしたのだ。
かつての地で、信長を封じた五輪の戦士の再来とされる星組隊員の力を以て、苦しめられながらも此れを退け。新次郎達紐育華撃団は街に平和を取り戻した。
しかしこの事実は、決して公の場で評価される事は無い。
それでもこの事実が、新次郎の誇りと自信に成り、また未来への希望にも成って居た。
屋上に優しく流れる心地の良い風を胸いっぱいに吸い込むと、新次郎は満面の笑みを浮かべて一つ大きく頷いた。
「よぉし、これからも頑張るぞー!」
両の拳を高く天に向かって突き上げ、決意も新たに新次郎は紐育の街並みに背を向け秘書室へ急いだ。
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