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「し、失礼します…」
押し開いた先の室内へ恐る恐る頭だけを突っ込み様子を伺う。
ラチェットが電話の最中なのだと知ると、先程の怒声は電話の相手への物で間違い無さそうだと思った。
しかしやはり彼女は新次郎に気付いていないようで、相変わらず怒鳴ってみたり、呆れたように溜息を吐いて額に手をあてたりと表情の変化が激しい。
ラチェットの剣幕と彼女が纏う近寄り難い雰囲気に、会話へ割り込む機会を完全に失ってしまった新次郎は、扉から頭だけを覗かせた奇妙な格好のまま、話が終わるまで待つ事を余儀無くされた。
「…ok、事情は解ったわ。仕方無いわね、後はこちらで何とかするしか無いようだし…取り敢えずは了解よ。…ええ、サニーには私から説明しておきます。…それじゃ。Bye」
ラチェットの小さな溜息と一緒に受話器が置かれたのを見た新次郎は、話が漸く済んだかと思いそこでようやっと扉の陰から身体を室内へ滑り込ませた。
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