いざアンナプルナへ

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 山を歩き始めて2日。ちょうど日本の山間部を歩いているかのようだ。階段状の田んぼが空高くそびえている。時折、行き交うのは、山羊の群と、牛の親子。そして村の子供たち。走り抜けてゆく子供たちの手にはなんと砂糖きび!  おずおずと私に砂糖きびを差し出す少女。  母は抱えた束の砂糖きびから、手に持った鎌を小気味良く振り下ろす。鮮やかな手つきで、子供のために砂糖きびが切り分けられた。私は安心して砂糖きびを受け取った。  私はいらないと遠慮する小さな手にコインを握らせた。子供の好意をお金に変えるのはためらわれたが、子供の喜ぶ物を何も持っていない。女の子の母に遠くから会釈すると、砂糖きびをしがむ。甘い。  村の子供たちと仲良くなれた気がして嬉しかった。砂糖きびの素朴な甘さがこの国を象徴しているようだ。  私はこの日からポケットにビスケットを忍ばせるようになった。受け取る子供たちの笑顔がうれしかったから。image=37509851.jpg
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