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図書館に通じる扉の前に、八朔達が辿り着くと、一人の男が立っていた。宗から比べると、幾分背は低いが、それでも180㎝は有にこえている。ただ、宗とは違い、不機嫌そうな表情を隠そうとはしない。眉間にシワを寄せて、腕を組んで待ち構えていたようだ。
「悪いな。加納。で、常連客は?」
「………そちらの方々は、何ですか?館長。」
嫌悪感を視線に込めて、ジロリと薬嗣達を睨んだ。狸は素早く、八朔から離れると、宗の足元に姿を隠す。
「あ?俺のダチ。腕は確かだから、連れて来た。で?奴らは?」
「!!部外者に助けを求めるとは!あなたは、私達の事を信用していないんですか?!」
激昂する、加納を尻目に、八朔は、落ち着いて言葉を返す。
「あのな。信用して欲しいなら、犯人捕まえろよ?お前に任せろって言うから、一月、待ったんだ。その結果どうだ?泥棒集団の下っぱすら捕まえてないだろうが。」
「………それは……!!」
加納が、言葉を詰まらせる。
「この件に関しては、後にしろ。犯人はどうした?」
「……まだ、中に居ます。」
加納が目を逸らすと同時に、扉の前から体を避ける。
「よしよし。じゃあ、悪いが、手伝えよ?お前ら!」
悪いと言いながら、まったく悪怯れていない八朔が、扉を開けて中に入って行った。その後を薬嗣が追う。宗は、扉を閉めてから、中に入る。
「……宗。」
「ええ。」
狸が宗によじ登り、上着の中に隠れながら、囁く。………扉を閉める時、横目で加納を見ると、明らかに憎しみを込めた目で、八朔の背中を見つめていたのであった……。
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