第一章

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 図書館の閲覧室に入った瞬間、犯人がどこにいるか、直ぐにわかる。老師と相談して、老師が囮になり、その後に宗が、犯人達を叩く作戦を実行する事になった。  宗は、犯人らしき男達に話しかけながら、注意深く様子を探っていた。………何かがおかしい……。話しを進めるにしたがって、宗の中での疑問が、確信にかわる。宗に言葉を突き付けられて、固まった男に畳み掛けるように言葉を続けた。  「貴方がリーダーですか?………裏で手引きしているのは、誰です?」  宗の言葉に、男は身体を強ばらせた。  この図書館は、警備自体、さほど厳しくはない。只、学園自体のセキュリティは、おそらく、世界の五本の指には入る。宗の父である、理事長、蒼樹 涼(あおきりょく)が、自分の趣味と実益を掛けた結果、とんでもなく、巨大で複雑なセキュリティが出来上がった。そのため、中に入るのは比較的簡単だが、出て行く時は、例え草一本でも、学園側の許可が無くては、持ち出す事は出来ない。その事から、宗は内部に協力者(若しくは、主犯格)がいると、睨んでリーダーらしき男の言動を、注意深く観察して、一つの結論に達した。  ………この程度のカマ掛けに、引っ掛かる男に、この犯行は無理だ。  そう結論付けた宗は、もう一度質問を投げ掛ける。  「手引きしたのは、ここの関係者ですか?」  「!!全員、逃げろっ!!」  男が叫ぶと、五人全員がバラバラに走った!  「逃がすかよっ!!」  宗が後ろを振り向くと、薬嗣と八朔が、一人ずつ捕らえて、当て身を食らわせる。  「足遅えな?タバコの吸いすぎか、運動不足か?」  「薬嗣、聞こえてねえよ。」  気を失い、床に転がった二人の男を踏んずけながら、薬嗣と八朔は、楽しそうに受け答えをする。  「教授、月草様、ここはお願いします!」  二人を横目に見ながら、宗は、他の三人を捕らえるべく、一瞬にして、閲覧室から出て行った。
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