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「しかし、どうしたんじゃ?いきなり事務員を雇うなどと。」
狸は、薬嗣の膝に座りながら、のんびりと質問を投げ掛けた。
「……えっ?あ、ええと……。」
「なんじゃ?顔なんぞ赤くしおって。…………ほほーう?」
狸は、ニマニマと笑いながら、答えを導く。
「あれじゃな?小僧の体質も落ち着いたし、事務員なんぞ入れて、坊に少し時間を空けてもらって、はにーむーんとやらに、行くつもりかな?うむうむ。ついに観念したのかの?小僧。」
ヒューヒューと、口笛の吹けない口で、狸は、薬嗣をからかった。からかわれた、薬嗣は、益々頬を染めて、思いっきり首を振る。
「ちっ違うっ!!俺はただ、事務仕事も、受け付けの仕事も、全部、宗が一人でこなしているから、だから……大変だろう思って……。」
狸は、薬嗣の顔を見ると、何となく泣きそうな顔をしている事に気がついた。………認めたいけど認めたくない。そう言ったとこじゃな。狸はやれやれと、溜め息を一つ吐くと、話題を変えて話始める。
「ところで、その事務員、どうするんじゃ?募集でもするのか?」
話しが変わった事に安堵した薬嗣は、いつもの調子に戻り、自分の考えを話しはじめた。 「さすがに募集はまずいかと思って、心当たり探ってみたんだよなー。そうしたら、ピッタリなヤツがいたんだっ!俺の特異体質は受け付けない。事務仕事は俺の知るかぎり、ピカ一。性格は頑固で、優しい。しかも……これ内緒にしてな狸。」
「なんじゃ?」
薬嗣は、狸に顔を寄せると、隣でお茶を用意している宗を気にしながら、小さな声で囁いた。
「お菓子作りの腕は、宗より、上っ!アップルパイなんか、超絶品っ!!外はサクサクの中は、林檎がトロトロで、甘さも控えめなんだけど、林檎の甘味を最大限に引き出して……あ。食いたくなってきた。」
「冷たっ!!こりゃっ!ワシの頭にヨダレを垂らすなっ!!」
「あ、悪い。」
薬嗣が狸の頭をゴシゴシと拭う。
「まったく。お前のその食い意地の悪さは誰に似たんじゃか。……まあ、良い。うむ。小僧の体質が効かないと言うのは興味があるな。して、その事務員の名は?」
「名前?みかん。俺と、道摩の同級生!」
………みかん?
狸は、変わった名前だな?と思いつつ、その事務員に興味を示した。
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