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「で、そのみかん殿には、小僧が事務員を募集しておるのは伝えてあるのか?」
「それがさあ。一応打診してみたんだけど、良い返事貰えないんだよな。今日も様子伺いに行こうかと思って。」
薬嗣は狸を机に乗せると、椅子から立ち上がる。
「ん?なんじゃ。その御人、この学園の関係者なのか?」
「ああ。ここの学園に居る。狸、ここの図書館、知ってるか?」
………図書館?
「あの、中央にある馬鹿でかい建物か?涼の理事長室のある。」
ここの学園は、下は幼等部から、大学まで学べるシステムをとっている。人の出入りが、多い分、学校内でありながら、商店街があったり、学園の理事長が経営する銀行があったりもする。その中でも、初代の理事長が本好きと言うだけで、自分の私室の下に、学校の中枢である、事務所と図書館を作った。その図書館の蔵書数は軽く百万冊をこえ、歴代の理事長が集めた、貴重な本も閲覧できる。
「あの図書館か。で、そこで何をしているんじゃ?」
「ん?図書館でやってる事なんて決まってるだろ。司書のお兄さん。たしか、館長もやってた筈だけどなー。」
自分の同級生の話しを愉しげにしながら、薬嗣は扉に向かって歩いた。
「そーゆー訳で、俺、みかんの所に行ってくるから。」
「こりゃ。言い逃げはないじゃろっ!ワシも行くぞっ!」
狸が、机から飛び降りると、薬嗣の足元から器用によじ登り肩に乗る。
「なんだよー。お前、お茶お代わりしたんじゃないのか?」
「おっ?なんじゃ、ワシを連れていかんと、坊に、みかん殿の話しするぞ?」
「……分かったよっ!大人しくしろよ?」
「誰が大人しくするんですか?二人共。」
二人で言い合いをしていると、低くて物凄い重い、氷点下な声が聞こえてきた。
「………宗……。」
「………坊……。」
冷ややかな声をした方を振り替えると、声以上に冷ややかな笑顔をした、宗が腕を組んで立っていた。
「みかんさんでしたか?私も興味ありますね。…………私もご一緒致しますよ。御二方?」
秘書の素敵な笑顔に、断る事の出来ない、教授と狸だった………。
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