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髪を撫でるように風が踊る。
イルは息を切らしながら街の中央にたどり着いた。
憩いの場として、そこは広場となっている。噴水の周りに芝が植えられて、休日には家族連れやカップルで賑わうのだが、時間が時間だけに人ひとりいない。
「早すぎるかな?」
噴水をぐるっと周り、その後ろに見える三階建ての建物を見つめる。
木造なのは一目みればわかり、この街の雰囲気にそぐわない。
そして、至る所に修理の跡があり、継ぎ接ぎだらけなこの建物は、世界を束ねるギルドのこの街の支部である。
「明かり…ついてるよね。」
確かめるように呟くと、壊れかけた扉に手をつける。
自分を落ち着かせるように何度も何度も深呼吸をして、手に力をこめた。
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