其の壱 発端

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『キョンく~ん、お早う御座います~。体の具合は如何ですか~?風邪、治りましたか?』 「はい、3日寝たら風邪なんて治っちゃいました。これも、朝比奈さん達のお陰ですよ。」 『えー?そんな事無いですよー?』 「いいえ、朝比奈さん達の看病のお陰ですよ。」 えーと、彼女の名前は朝比奈みくる。同じ学年で、性格はおっとりしていて、とてもからかいがいが有る。 『…早く行きましょう。涼宮さんが待っていますよ。』 朝比奈さんは照れ隠しするかの様に顔と話をそらした。 『涼宮さん、お早う御座います。』 『みくるちゃん、おはよー!…キョン!あんた休みすぎよ!あたし何年間待ったか…。』 「3日だろーが。風邪だからしょーがねーじゃねーか!」 『…あ、あたしにとっちゃ3年に相当する位寂しかったって事よ!』 「へー、そうかい?」 えー、この憎たらしいが寂しがりな彼女は、涼宮ハルヒ。 1つ上で、クラスのリーダーシップをとる学級委員長だ。 おっと、俺の紹介、まだだったな。 俺は皆からはキョンと呼ばれている。何故か誰も名前で呼んでくれないが、そこは触れないでおく。 最近この雛見沢に引っ越してきたが、この通りすっかり皆に馴染めている。 『んじゃ、学校まで競争よ!先に席に着いたら勝ちよ!良いわね!?よーい、どん!!』 ハルヒは俺達の話す隙を与えぬ間にスタートした。なんと卑怯な。 「こら待て!俺の体力、甘く見るなよ?負けねーぜ!」 『望むところよ!』 『わ~、二人とも待って下さい~!』 俺は楽にハルヒを抜かし、大差を開いて学校前に来ていた。『こらー!待ちなさーい!』 ハルヒの言葉を無視し、教室の扉を開く。 バシャッ 「うわっ、トラップ!?」 しまった。すっかり忘れていた。あのトラップ野郎の事を。 俺の頭に降り注いだ液体は水だった。今日はマシだな。 気付けばハルヒは隣に居た。 『あっはっは…!引っ掛かってやんの!はっはっは…!』 ハルヒはこの事を察知していたのだろう、びしょ濡れに成った俺を嘲笑った。なんてこった…。 すると、犯人であろう者がニヤニヤしながら登場した。 『おやおや、一体如何されたのですか?びしょ濡れですね。』 黙れ。 『ああ、清々しい朝だと思ってたらいきなりどしゃ降りになってな。たった今、この教室と廊下の境でな。』 隠しているつもりか、まだニヤニヤしてやがる。つくづくむかつく奴だな。 次のページへ続くぞ By キョン
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