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お兄様、お兄様――――
そう、あれは雪が降り始めた季節だった。 夜中にいつもお兄様は出かける。
お兄様は今の時代の政治に反発し、幕府を敵に回す活動をしていたのだ。
嬢:「お兄様、今日もまたあそこへ行かれますの?」
兄:「あぁ。それが俺の役目なんだ。」
嬢:「お兄様、もうお辞めになって。お父様も大変ご立腹よ。私達は幸せに暮らしているわ。何も望むものはもうありません。」
兄:「すまん、真紀。お前にはずいぶん悲しい思いをさせてしまった。でも、もう終わるから。」
嬢:「お兄様っ!!」
あれが私がお兄様を見た最後だった。
嬢:「三角、お兄様の帰り遅過ぎないか?」
お:「……ハイ。」
もう、夜を越え朝を越え昼になっていた。
どんなに遅くても、いつも朝には帰ってきて下さっていた。
私は後もう少ししたら、お兄様は帰ってこられる。
そう信じて何日も何日もまった。
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