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超高層ビルディングの屋上に立ち、目の前に広がる煌びやかなイルミネーションに彩られた摩天楼を見つめながら、少女は一人おどけてみる。
ビルの谷間を吹く風に長く伸びた赤髪が踊る様に棚引く。
「ね、そう思わない?『スカーレット』?」
そう言って少女は振り向き、その背後で跪いている己の愛機『RVR-14フェイ‐イェン・ザ・ナイト』に同意を求めた。
ちなみに『スカーレット』とは彼女が名付けた愛称だ。
だが愛機は沈黙をもって返す。
まあ少女の方も返事を期待していた訳でもない。
実際返事が返ってきたらそれはそれで恐いであろうし。
だが今にも喋りだしそうな妙な人間臭さが『フェイ‐イェン』という機種にはあるのだ。
兵器とは思えぬ少女的なフォルム、しなやかな挙動。
また一説には、RVR-14の原型となったSAV-14のオリジナル『VR-014』には自我が存在していたという。
しかしVR-014はその創造者であるプラジナー博士共々その行方をくらませており、真偽の程は定かではない。
「ん?」
とその時、パイロットスーツの左手首部分に備え付けられている通信機からコールが入る。
「はーい、何か用?」
『何か用?じゃない!何処ほっつき歩いてるんだ、ティア!』
「なんだカインか」
ティアこと、ティアイエル・ローゼンバーグはあからさまに不満げな声をもらす。
『な、なんだとはなんだ!心配してやってるのに!』
通信相手のカイン・リーヴズの怒った顔が目に浮かび、思わずティアは吹き出す。
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