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「ふふっ、ゴメン。そうだよね、私の事心配してくれてるんだよね…」
『あ…ああ、そ、そうだよ…』
急に可愛らしくなったティアの声にカインの胸の鼓動が微かに高鳴る。
「ま、別に頼んじゃいないけどねー」
しかしそんな甘酸っぱい一時は、粉々に打ち砕かれた。誰あろうティアによって。
『………ブリーフィングが始まる。さっさと帰ってこいっ!』
最後にバカヤローと言い放ち、カインは通信を切った。
「ちょ~っとからかいすぎたかな?」
ティアはぺろっ、と舌を出す。
悪いかなとは思うが反省はない。いつもの事だ。
それはそれとしてすぐ戻らねば。カインはともかくマリィやドクターに迷惑かけたくないし、アレクに怒られるのはなんとしても避けたい。
ティアはコクピットに飛び込むと素早くスカーレットを起動させる。
「さてさて、急がなくちゃ!」
『真紅(スカーレット)』の名の通り鮮やかな赤で染め上げられたフェイ‐イェン・ザ・ナイトは立ち上がると、輝く摩天楼の光の海へと軽やかに飛び出す。
その姿はまるで、夜の闇に舞う妖精の様であった。
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