EpisodeⅠ 端末都市#359

3/9
前へ
/47ページ
次へ
「組織改革が進んでいるとはいえ、戦闘集団としてはいまだDNAよりRNAの方が優秀でしょうね」 「今の所それでも五分五分の戦局だしね。まあその方がFR-08(フレッシュ・リフォー)は良いのだろうけど」 電脳暦において、戦争の代替物として誕生した『限定戦争』。戦争という名を冠してはいるが、その実態はある意味ビジネス(商売)と言って良いだろう。(と言っても無論死者は出る。戦闘レベルにもよるが) 人々は限定戦争の戦闘中継を喜んで視聴し、戦場ではVRを初めとする兵器・弾薬等あらゆる物資が消費されそれらを供給するプラント・業者は空前の好景気にわいた。 DNAとRNAの争いはこの『限定戦争市場』を活性化させた一大闘争であり、どちらかの戦力を増強させて一方を圧倒したり、ましてや闘争自体を終わらせるなど誰も望んでいなかったのである。 故にDNAのメインスポンサー、FR-08は組織改革による戦力増強を推し進めながらも強くなりすぎない様にバランスをとっていた。 「それはそうとして、隊長」 「何かな?」 「どうしてわざわざ私達は歩いて移動してるんです?車ならあったのに」 「たまには夜の散歩も良いかな、と思ってね。それに―」 言いかけ、アレックスは今回の戦場となる今は住む人もいない都市を見つめた。 「うちの不良娘も、もうそろそろ帰ってきただろうからね」
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加