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2階の客室の窓からは、カイリが言った通り、海が一望できた。
「わぁ~!綺麗~」
セルシアは窓から身を乗り出し、眼下に広がる海を眺めた。
「あたしとお兄ちゃんの生まれた家も、この街なんだよ。だからあたし、この街すきなの。」
カイリが満面の笑みでセルシアを見る。カイリとルディは故郷でこの片翼の天使を始めたのだ。生まれ故郷を知らないセルシアは、そんなカイリ達を羨ましく思った。
「生まれ故郷っていいよね。あたしは孤児だから、故郷とか知らないけど、あったらイイナって思うもの」
「え?」
「あたし、人探ししてるって言ったでしょ?…それ親なんだ。母親。」
名前も知らない母親。でも、逢いたい母親。抱き締めて貰いたいのかもしれない。親の愛を知らないから…
「だったら、ここがセルシアの家だよ!あたしもお兄ちゃんも、セルシアがお客さま第一号って言ったでしょ!?だから、大歓迎だよ!ね?お兄ちゃん」
カイリがルディを見て同意を求める。
「ええ」
「なんかよく分かんない理屈だけど、ありがとう、カイリ、ルディさん」
片翼の天使。マスター・ルディと、妹・カイリ、そして宿泊客第一号となったセルシア。物語はこの宿を舞台に進んでいく。
第3話に続く
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