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それが私の名前だということに気がついたのは三日後に彼女と再会したときだ。
いつものように道端で夜空を眺め、埃まみれ泥まみれの私は夜食にありつこうとしていた。
これからゴミ箱から漁ってきたカビたパン一切れと、賞味期限の過ぎたトマトケチャップの残りを水で薄めたものを食すのだ。
水は公園の水道から頂いたものだし、コップだって三才児が使っていそうなベースがピンク色のわけのわからないキャラクターがうがいをしている拾いものだ。
左手の中指と親指でコップの縁を持つと一切れのパンを半分にしてトマトケチャップを薄めた水に浸した。
パサパサの状態だったパンを右手の人差し指で何度も突き、よく染み込ませ、柔らかくなってきたところで原型の一切がなくなるまでこねくり回す。
それを味わって飲む。
不思議なもんだと思った。
一切れのパンを半分にすることで二つになるのだ。量こそ増やしていないが数を増やしている。それは私にとってみれば量を増やしていることとほぼ同義なのだ。何故なら食べ方が増え、ある一種の楽しみが増えるからだ。
そんなくだらないことを考えてるとコップの中は空になってしまった。
コップの底に溜まったパンクズを指で掻き込んだときだ。
彼女と再会したのは。
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